2004.6月 小林 正明
ある仏教宗派のツアーに知人の縁で飛び入り参加して、6月上旬に1週間スリランカを訪問した。同国は国民の約70%が仏教徒であり、インドで仏教が廃れた今、釈迦直系の教えが今も守られているという世界でも希少的な国である。9時間のフライトを終えた一行12名が税関を出ると、現地旅行会社の係員と共にレンガ色の衣を着けた僧3名が私達を出迎えでくれた。全員日本留学経験者であり「コンバンハ」と合掌での挨拶。全員での写真撮影は新聞記事のためだと言われ、事実翌々日の現地紙に掲載された。
![]() 現地紙に掲載 |
![]() 歓迎式典 |
名所佛跡観光、寺の経営する各地の幼稚園訪問などのツアー中、付きっ切りで世話をしてくれたのは、アリヤワンサ師43歳、どこか釈尊似の男前である。同師は12歳で寺に入り修行の後、大学在学中に日本仏教に関心を持ち日本留学を目指した。高校の仏教・歴史教師として来日費用を稼いだ彼は奨学金で5年間滞日、龍谷大学の修士課程を終了帰国後現在大学講師兼幼稚園経営を勤めている。
![]() 幼稚園 |
![]() 保母さん |
アリ師が我々と共に歩くと道行く村人が合掌する。赤青黄白ストライプの仏教の旗を靡かせたバスの最前席にアリ師の姿を見ると狭い道で対向車が道を譲る。博物館などに入ると、係員が彼にさっと椅子を差し出す。訪問した幼稚園で子供達に「大きくなったらお坊さんになりたい人?」と聞くと一斉に「ハーイ!」と手を挙げる。この国でお坊さんの社会的地位は高く尊敬される存在なのである。
そこで僧の暮らしであるが、食物は檀家が喜捨したのみが原則でスーパーでの買物や外食は禁止、朝昼食だけで正午以降は食事無し。我々に同行した旅行中は、例外的にガイドが選んだ物をただ頂く。着衣は黄色レンガ色等の衣だけで通す。映画、コンサート等娯楽も仏教関係以外はダメ。スポーツもプールで泳ぐのもダメ。要するに、自発的欲望を絶つことが求められているのだ。そして女色妻帯は勿論厳禁!禁を犯せば即僧侶失格、還俗となるのだ。この他にも正式の僧であるためには227の戒律を守らなくてはいけないと言われている。僧への道であるが、多くの場合10歳前後に本人の意志より親の希望で寺へ預けられる。立派な人になって欲しいという気持ちと同時に、そうすることで一族にご利益があるという願望もあってのことだと言う。小坊主さんには、遊びもオヤツも許されるが、やはり寺院外ではダメ。そして彼等が成人して正式の僧になる「具足戒」儀式の段階で、約半数は自分の意志で還俗すると聞いた。日本なら99%還俗だと思う。一生女性禁止の人生など小生には考えられない。さて、釈迦が涅槃に入った時の沙羅の木の分枝とか、悟りを開いた時の菩提樹の親戚とか拝観もしたが、それよりもツアー道中で頂いた果物のご利益には脱帽した。産地で並んだ露店から食べ頃の物を選んではガイドが薦めてくれるマンゴ―、パパイヤ、ジャックフルーツ、ランブータン、マンゴスチン、ドリアン!ドリアンだけでも3個食べ比べた。
![]() ランブータン |
![]() ジャックフルーツ |
帰国後、某国でドリアン食べ過ぎで死者の出たニュースに驚いたのもご愛嬌か。子供たちの輝いた瞳を忘れられずスリランカプロジェクトを始めようかと思ったりしている。彼の地の人々に感謝合掌。
![]() コロンボの警官 |
スマトラ沖地震とお坊さん
2005.1月 (上鶴間) 小林正明
昨年訪問したスリランカとケニアの両国が津波の被害に会いました。ケニアの方は幸い軽微で済んようですが、スリランカはご存知のように甚大な損害を受けております。訪問したお寺や幼稚園の人たちの安否が心配で、お世話になったアリア師に早速メールを入れたのですが返事が無く、益々案じていたところ年明けしばらくしてから無事の連絡が入りました。被害に会った地方の支援活動で忙しく自分の寺を留守にしていたのでした。
この国では仏教が暮らしにしっかり根付いており、お寺は災害支援の拠点ともなるんですね。住まいや食料、医療など物的支援も大切ですが、親や子供、兄弟などを瞬時にして失った多くの人々を慰め励まして力を与える精神的ケアに僧侶は重要な役割を果たしているようです。「僧侶の務めは人々を悩みや苦しみから解放することであり、死者を弔うことではない。」というお釈迦様の教えを実践しているスリランカのお坊さんたちに、改めて敬意を表したいと思います。
遅れて着いたアリヤ師からの年賀状をご紹介します。
新年明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願い申し上げます。 皆様お元気でお過ごしのことと思います。スリランカ・メッター幼稚園よりご挨拶させていただきます。新年にあたり、メッターのある男の子のお話を皆様にお伝えしたいと思います。メッター幼稚園では毎年「ナイトキャンプ」を行います。去年も110名の園児がメッターで楽しく一泊親を離れて泊まりました。ムクヂタという園児がその日家を出る時、「ママ、パパ、今夜2人だけですね。ぼくが居なくても心配しないでね。」 そう言ってからこの子は家に有る仏陀の像に「お釈迦様、今夜ママとパパだけ家に居るの。どうか2人を見守ってください。お願いします。」と手を合わせたというのです。 ムクヂタの両親はその嬉しさを涙を流して語りました。無垢なムクヂタのこんな話に、やはり子供の教育をもっと大事に考えなければと思います。 皆様のご健康とご多幸を心より念じております。合掌 |
![]() 年賀状 |
ご感想など頂ければ幸いです。mmkoba@jcom.home.ne.jp
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