世界の窓

 相模原市国際交流協会(SIA)    Sagamihara International Association


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                                                       上鶴間  小林正明

昨年十一月、中東のヨルダンへ妻と旅しました。
なぜそんな所へ?と多くの人に訝られましたが、私には必然
の理由がありました。

<理由其の1>アラビアのロレンスが砂漠の民ベドウィン達
と共にアラブ諸国の独立を目指してオスマントルコ軍と戦った
主戦場であり、広大な砂漠がワディ・ラム国立公園として保持
されていること。映画の多くの場面はこの砂漠で撮影されたそ
うです。彼の著書の題名となった「知恵の七つの柱」呼ばれる
岩山もここにあります。

観光客用のベドウインキャンプ施設もあり、厚手のウールのテ
ントの中は8畳くらい、質素なベッドに毛布とローソク、まあ悪く
は無いのですが共同トイレが100mくらい離れているのが夜中
には問題でした。食事はビュッフェ形式のベドウイン料理。イン
ドに負けないくらい辛いメニューが多かったのは意外でした。


砂漠の七つの柱

ベドウインキャンプ

キャンプの食事

<理由其の2>テニス仲間のk氏がシニア海外協力隊員として現地勤務中であること。現地に知人が居ると旅は
数倍中身が濃くなることはアメリカ、フランス、オーストラリアなどで体験上味をしめていますので。ホームステイに
は格別の楽しみがあります。

其の他にも映画「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」のロケ地となった、世界遺産のペトラ遺跡、世界中で最も保存
状態が良いと言われるローマ遺跡のジェラシュ、塩分が濃くて体が沈まない死海、預言者モーゼの終焉の地ネボ
山など見所は沢山有り、観光はヨルダンの最大産業の一つでもあります。 


ペトラ遺跡

ジェラシュ遺跡

さて、観光地回りは現地ツアーを利用して一週間無事に進み、明日は首都アンマン入りして5日間のフリータイ
ムを楽しもうとくつろいでいた死海のホテルで、夜中に突然の電話に驚かされました。明後日に会う予定のシニア
海外協力隊員K氏からで、「テレビニュースによると、先ほどアンマンで同時多発テロがあり、多数の死者が出たら
しい。予定変更は必要ないと思うけど一応知らせておく。」という内容です。翌朝には日本にいる息子から、旅を中
止して帰国した方がいいんじゃないかとの電話もありましたが、のんびり屋の私達は滞在予定のホテルは無事な
んだし、ここで帰ったんじゃ勿体ないよねと予定通り続行するすることにしました。

現地ツアーは私達二人に乗用車ドライバー付の贅沢で自由の利く旅です。ドライバーのナセル君はパレスティナ
系のアラブ人で3歳の女の子の父、妻子の写真を財布に大事にしまっています。イスラムだから何人も嫁さんOKで
しょ?と聞くとお金かかるし、一人でもプローブレムあるのに何倍も増えたんじゃたまらないと言って笑いました。私
も同感した次第でした。両者同程度のカタコト英会話なのですが、彼はスペルが駄目なので電子辞書を見せても
通じず政治問題など複雑な話は出来ませんでした。

 さてテロの翌日からは、道路の検問が俄かに厳しくなりました。それまではナセル君が「ジャパニーズ」と言うとフ
リーパスだったのに、何度もパスポートのチェックを受けました。アンマンに入る前、預言者モーゼの終焉の地と言
われるネボ山近くの町ではデモ隊に出会いました。アラビア語のプラカードについて聞くとテロ反対、国王万歳と言
った内容だとのこと。アブドーラ・フセイン国王の写真も沢山掲げられています。どうやら官製デモだなと理解しまし
た。緊迫感は感じられず子供達もお菓子を食べながら楽しそうに参加していました。


ドライバーのナセル君

和やかな反テロのデモ

 その日の午後アンマンのホテルに着くと敷地の入り口でまず手荷物オープン検査。部屋に落ち着いてから観光
名所の旧市街に行こうとタクシーを頼んだら、テロの影響で封鎖されているからと中止の勧告。安全な場所を推薦
してもらって行った先は完全に欧米化された高級ショッピングモールで、有名ブランド店が並び値段も日本と変わら
ない。がっかりしてカフェでアラビアコーヒーを飲みホテルに帰ると驚いた。正面玄関内に空港でおなじみの金属探
知ゲートが設置されていたのです。3時間前には無かったのに!

 ところで翌日は旧市街の封鎖も解け、何も無かったようなアラビアのバザールの混雑と雑踏を楽しみ、予定通りK
氏にピックアップしてもらい彼の勤務地イルビッドへ向かいました。同市は大学が沢山ある人口ヨルダン3位の学園
都市で、彼は通信工学の教授として働いています。大学はオリーブ畑の中に建物が点在しているといった環境で、
スカーフを被った美人学生たちも大勢ベンチでおしゃべりや昼食を楽しんでいました。たまに居る髪を見せている女
性は数少ないキリスト教徒だとのこと。とにかくどの町でも、日本ならモデルにスカウトされそうな美人が多いのに
感激。色白で眼はパッチリ、すらっとした腰高で眼の保養になりましたが、たまにはヘソ出しルックもいてびっくり。
おしゃれに国境は無いのです。

イルビッドはシリアの国境に近い町なのでK氏共々首都ダマスカスを一泊訪問しました。ヨルダンの物価は日本の
五分の一くらいですがシリアはさらに3割程安いとあって買物に行く人々も多いそうです。ダマスカスは4千年の歴
史を誇る古都ですから其の旧市街のバザールは壮大なものでした。日用品、食料品、香辛料、土産物などの小さ
な店が数キロ続き、迷子にならないよう妻は私のザックの紐を手放しませんでした。

今回私達が頼んだタクシーの運転手は、K氏の生徒アリ君の兄さんだという事で楽しい旅となり、帰りの道中で
自宅に招かれました。通常、訪問者が男だと女性は姿を見せないそうですが、妻が一緒だったためお婆さん、娘さ
ん、お嫁さんなども勢揃い、さらに子供達もワンサか現れて賑やかなティパーティとなりました。ケーキは運転手君
がダマスカスで大量に仕入れたもの、飲みものはフィルターで漉さずにドロドロした液体の上澄みを飲むアラビアン
コーヒーです。最初に小さな一つのカップにポットから少しずつ注いで全員で回し飲みをします。口をつけたところを
拭ったりはしません。親愛と歓迎の儀式なんだそうです。私が女性と握手する時、彼女達は長い袖で掌を包み間
接握手にしていました。一家のボスのお爺さんが妻の手を握る時、やはり自分の袖で手を包み直接肌には触れま
せんでした。毎日のようにテニスのダブルスで終了後には女性と握手をしている私には新鮮な驚きでした。

現地に知り合いが居ることでまたまた得がたい経験が出来たヨルダン訪問旅でした。


家庭訪問ー1

家庭訪問ー2



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